【裏っ側の話】世界的にLTEはFDD-LTEからTDD-LTEへ移行する
今回はやや専門的な業界話。
一般的に日本で「LTE」と言えば自ずとFDD-LTEの事を指している。
日本では標準化団体3GPPでNTTドコモがイニシアティブを執った関係上「クロッシィ」として他キャリアに先駆けてLTEをスタートさせたが、その際に3Gの技術W-CDMAの延長線上にあるFDD-LTEを採用した。
今回の記事に登場しているTDD-LTE(TD-LTE)は、そのFDD-LTEとは別のアクセス方式だ。上の図のようにFDDではデータ通信に上りと下りの2チャンネルが必要だが、TDDでは1つのチャンネルで上りと下りを同時に賄う。
「そんな事が出来るのかいな」と思うかもしれないが、TDD(Time Division Duplex)の名の通り“時間差”で切り替えることで実現をしている。
そもそもインターネット同様データ通信は概ね「下り」がメイン。理にかなった方式でもある。
近年TDD-LTEに関連した大きな話題は、8億ユーザーを有する世界トップのキャリアチャイナモバイルiPhone取り扱いだろう。
2014年1月17日に、チャイナモバイルの方式TDD-LTE/TD-SCDMA(3G方式)に対応させたiPhone5s/iPhone5cの発売を発表するや、爆発的に中国市場に受け入れられた。
昨年日本でiPhone6発売当日にホームレスや外人が列に並ぶ事件があったが、これもiPhoneがTDD-LTEと対応バンドに適合していなければ、時差の関係で日本の発売が一番早かったと言っても無かった話だ。
さて、日本のように2Gを「停波」させて周波数帯を他に転用できる幸福な国は少ない。大抵の国は2GであるGSM方式に3GのW-CDMA/CDMA(TD-SCDMA)が加わり更にLTEが加わるーーつまり周波数帯が細切れで枯渇気味。
そこへ周波数帯を有効利用可能なTDD-LTEは理に適っており、懇意にしている通信アナリストの皆も「LTEはTDD-LTEへシフトする」と口を揃える。
日本でTDD-LTEと言えば「互換」の但し書きがつくがWCPのAXGP(ソフトバンク4G)とUQ-WiMAXのWiMAX2+があるが、私の識る限りでは前者の方が素性が良い。高速がエリアに関わらず出やすい。
これはPHSのアンテナをベースに「クラウド基地局」といって、自律的に基地局間干渉を
低減させる事が出来る。
2.5GHz帯という「直進性」が強く「減衰率」高い周波数帯を運用する場合、WiMAXのような一般の携帯電話基地局の構成では干渉が強くて非効率なのだ。
AXGPは周波数帯の特性を見越してPHSのアンテナ技術をドッキングさせた事で、エリアによるデータ速度のムラが少なく、高速が出やすい。
WiMAX2+が示すスペックに比較して実効速度が良くない事が何よりもその証明と感じる。パラメータ自体は大きな差がないのだからやはりアンテナ部分の問題だろう。
UQ-WiMAXは現在何かと騒がしいが、私はそんな理由でもともとオススメはしない。
今回はそんな今後のLTE動向に触れてみた。