本を「借りる」事を恥じない“プロフェッショナル”達
このようなブログがあった。
ここではダナ・トーマス著、実川 元子翻訳による「堕落する高級ブランド」という書籍を取り上げている。
今回はこの書評に関してではなく、このココベイ株式会社ファッションアナリストである山田耕史なる人物の感覚に物申したい。
この人物は間違いなくファッション業界で禄を食んでいるいわゆる“プロフェッショナル”であろう。
ところがここでは平気で“私は図書館で多くの本を読んでいる”とばかりに実際に管理ラベル付きの書籍を写し「これだけ気になる箇所がありました」と自慢気に夥しい付箋まで示している。
ーー私は「プロで自分の血肉にする学習には投資すべき」と考える。それがプロとしての矜持だと思う。
本来彼は「この本は有意義でした」と記事中で紹介しているようなので、なおのこと書籍は購入すべきだったのではないか。
後に「この本は手元に置こう」と購入に走ったかもしれないが、記事中には少なくともその記述はない。
著者をリスペクトしその思いに応えるには「印税」であろう。
ファッションならデザイン・意匠に当たると思う。
今回の書籍は普通に書店で注文も出来、Amazonでも新品で購入できる。別に絶版ではない。
一般人が興味のあるカテゴリから本を読みあさるには図書館は便利で、著者達からしても「自著に触れる入り口」としての価値は図書館に見いだしてはいる。
ただし書籍から著者が得られる利益は一義的には「印税」なので、図書館で触れて有意義と感じたなら以後は購入して欲しいのが本音だ。
有意義な書籍を出版し、その印税で次作の制作コストに充てるーーこれはミュージシャンでも、アパレル業界でも変わることのない循環である。
極端な話、皆が図書館だけで本を読めばその大好きな作家は経済破綻となる。
しかしこの感覚は案外一般化されていないとも感じる。
一時隆盛だったネットでのNapsterに端を発した「ファイル共有ソフト」界隈では「無償で音楽や動画を得ることは賢い」かのような風潮があったし、Amazonのレビューには時折「図書館で読みました」と、ことわりを悪びれずに入れているものもあって笑えない。
昨年オープンし話題となった「森の図書室」も「昔から本が好きで、やっと夢を叶えました」とクラウドファウンディングで資金を集めるも、店舗に並べる書籍を集める際には安く済ませる為に殆どBOOKOFF等の古本か、寄贈で揃えたと聞く。
つまり「本好き」と言えば聞こえはいいが、ここのオーナーのやっている事は結局「作家殺し」のような呆れた「本末転倒ビジネス」なのである。
そもそもこの森の図書室も広くない空間内で周囲で本の出し入れを繰り返す「ホコリが常に舞い上がる空間」で飲食をさせようという不衛生ささえにも無頓着な有り様。
さて、前出の山田氏も含めてこれらの人物は結局「知的財産権」の感覚が欠けているーーと言うよりも「教わることなく今まで過ごして来た」のだろう。
映画館で流される 「映画館に行こう!」実行委員会による「NO MORE 映画泥棒」のキャンペーンは見事に失敗で、本来は制作者の「糧であり自己存在証明」である側面をアピールしなければならないのだ。
これは、出来れば義務教育世代から落とし込むべき「概念」だと思う。
結局これらの「イノセント」達が文化を破壊している側面を感じた次第。
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