“地元住民”による新国立競技場定点観測(2015年5月10日)
このように一悶着はありましたが、とりあえずなかなか決定しなかった解体業者も決まり旧国立競技場は順調に解体作業が進んでいます。
【請け負った業者は関東建設興業株式会社。HPでも工事の落札を大々的に報じている】
至近に居を構える身として、今後ざっくりながら進捗を報告してゆきたいと思います。
【いきなり見てもピンと来ないかもしれないが、以前はこの角度から神宮第二球場は全く見えなかった】
まず、今回の新国立競技場建設(ザハ案)へ最初に異議を唱えた槇文彦氏設計の東京体育館側より国立競技場を望む。
現在はまるで当たり前の風景のように「あったもの」がなくなっている。
【“解体の経過”などと書いてしまいましたが、実はもうほぼ更地です(笑)】
そして「千駄ケ谷門」から眺めるとほぼ更地になっております。
ちなみに解体中の画像はこちら
【千駄ケ谷門から見た解体中の国立競技場】
4月11日の撮影時にはもうほぼサブスタンド側しか残っていませんでした。しかし実際に見ると中々衝撃的で「あ、ホントに解体するんだ!?」と言った感じ。
私も何度も海外と行き来したものの、国立競技場を眺める位置に居を構え早20年余、付近で一番象徴的な建造物が取り壊されている現実は目の当たりにしなければ実感出来ないものなのでしょう。
【絵画館方面から千駄ケ谷駅側を望む】
絵画館側から眺めますと東京体育館が見えます。カニのような建物がそうです。
一説には槇文彦氏は自分の作品の真横に建つ新国立競技場だからこそ、過敏に反応したとの噂も聞きます。
確かに「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」とは言っても、たかだか造られて90年程度の神宮外苑を、世界的にも著名な建築家が「歴史的文脈」などと大仰に語るのは「無理やり感」が漂っているような。
さて、今度はこの旧国立競技場の取り壊し及び新国立競技場建設に関わるであろう周辺にも触れましょう。
【泣く子も黙る“ホープ軒”はタクシーの運転手が主な支持層とか】
まず有名なラーメン店「ホープ軒」。
国立競技場では陸上競技はもちろんJリーグやアイドルのコンサート会場としても有名。開催の当日は周辺には人々があふれ返ります。
神宮球場や絵画館周辺でもイベントが重なりあう事もあり、そんな日にはJR線の「信濃町駅」と「千駄ケ谷駅」少し離れて東京メトロ「外苑前駅」でも吸収出来ず、大江戸線の計画で「国立競技場駅」が新設されたほど。
そんな混み合いの光景を見ると、周囲にはさぞ飲食店が多いと思いきや、むしろこの周辺はオフィス街でも学生街でもなく、人の流れが極端で安定しません。
そのため「飲食店の鬼門」とも呼ばれています。
ですから、この「ホープ軒」も新国立競技場完成までは、間違いなく売り上げに影響があるはずです。
【新国立競技場の占有スペース(予定)】
【新国立競技場の配置図。左は原案、右がJSCによる縮小案=JSC提供】
さて、ここで位置関係を確認しましょう。
ザハ案は旧国立競技場よりはるかに長い楕円形。現在の、デモ行進の発着地としておなじみの明治公園と霞ケ丘アパートまで「新宿区の渋谷区との接面目一杯」まで使い切る構想です。
【霞ケ丘アパート5階より旧明治公園を望む】
今回の構想では霞ケ丘アパートが丸ごと消滅する事になります。
【霞ヶ丘アパート“外苑マーケット”西口側より】
霞ヶ丘アパートは東京オリンピック時には選手村。その後東京都営住宅化しました。
【外苑マーケットの東口】
【外苑マーケット西口アップ】
外苑マーケットの西口の看板にはおそらく1960年代後半とおぼしき国民生活の時代性を感じさせます。
なにせ50年経った建物。コンクリート建築の寿命です。
すでに2年前には全体の住居移動に関しての説明会があったそうですが、本日現在はまだ住民がいます。
国立競技場および明治公園がほぼ更地になり、残すところはこの霞ケ丘アパートだけとなります(つづく)
新国立競技場、何が問題か: オリンピックの17日間と神宮の杜の100年
- 作者: 槇文彦,大野秀敏
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